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おそらく誰もやってこない、隠れブログ。その昔書き散らしたものを、さりげなく・・
Posted by - 2026.06.26,Fri
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Posted by proteus - 2008.04.26,Sat
のれんをくぐると
わあーわあー言っている声と共に
未来の見える椅子に座ってしまう
ビールがコップに注がれる毎に
とんでもない未来が見え始めて
最初はゼリーみたいに軟らかく透明だったのに
口角に泡をとばしてしゃべっているうちに
固まりはじめて、とっくりみたいにことんとテーブルの上に、音を立てて倒れる
その頃はだいぶまわっていて、とっくりだかしゃっくりだか何だかよく区別が付けられなくなるが
確かに、そこには確かな未来があり
すぐにでも叶いそうだったのに
時計の針が閉店時間を指すと
シンデレラみたいに慌ててのれんの外へ出ていく
電車が酔っぱらいながら駅に入ってくる
ぼくらはしらふのしぐさで乗り込む

ビールが注がれる毎に
期待している未来が現れて
ゆらゆらと揺れながらぼくらを誘い
すぐにでも行けそうなのに
朝、目が覚めると夢のような気もする
服に居酒屋のにおいが残っていて

'78, 2/21
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Posted by proteus - 2007.08.11,Sat
231.Ⅰ「出発の前の晩のさまざまなおもい」

そこにうずくまるべき場所があり
何千年もの長い間、私の殻は居続けることが出来ると信じる
しばらくの間、私は自分の殻を眺め
声には出さぬけれど、雄叫びをあげる気持ちで
ついさっきまで、どうしても出来なかった事柄を、
全部してくるために出かけることにする

ひとつのことをするたびに
肉付けされて大きくなり
持ちきれるいっぱいの能力はやがて飽和する
そこにうずくまるべき場所があり
昔、地上を歩き回っていた私がある
愛すべきあいつに
この力こぶを与えてやりたいと
ゆびさし、みつめる
棺に入ってから物語が始まっては何にもならないから
そこからゆびさして、更に力を送ってみる
'78, 8/ 7


232.Ⅱ「道すがらおもうこと」

私の住む町と変わりのない雲が浮かび
同じ暑さの空気があり、ざわめきがある
腕を抉って、死ぬまで消えない程の傷を
体当たりしてでも、そこで得ようと決心するが
傷つくすれすれで止めてしまう
言い訳は”ちょっと一服”だけど
あとは必ず気が変わって逃げることになっている
よく似た景色の、微妙に違うところへ切り込んでいけば
必ず自分を含めた絵になって、いつまでも残り、それが目的になるが
素通りには何もぶちあたるものはなく
入っていく空隙なんてものも見えないので
疲れた顔して次のページに入って行くばかり
そこにまだ私は登場しない。端役にさえまだなっていない
途中下車してみようか。乗り換えてみようか
鼻をひくひくさせて匂いを追ってみるが、今は鼻がちょっと利かないので一服
'78, 8/13


233.Ⅲ「海を渡っていくものら」

凪いでいる海がある
小さなスクリュー音と
耳をこする風の音がある
思い立って渡ろうとする、遙か大昔から
目には見えない程の小さなものらが、その海を渡っている
快いリズムを口ずさみながら
まさしく大行進である。
快速艇が波を蹴立てて去っても
動ずることもなく波に乗りながら、黙々と進み
岸に着くとそのままどこかへ消える
だから島は彼らの体でふくらんでいて、海の色とよく似ることがある。

彼らは、海が日を照り返す時
その加減で一瞬見えることがあり
私達の住んでいる都会の中や、平野の中では気がつく機会さえないが
見えたからと言って、何があると言うこともなく
彼らが海を渡っていく後ろ姿を見る時
彼らこそ生き物が住むところ、全部を覆っている香りであることが信じられる
吸い込むとそれぞれの場で最もしっくりしている
見ろ。彼らのリズムが聞こえる
勇壮で、少し悲しそうで、ほんの少し愛嬌のある
見上げても、見上げきれない空のその下
視野いっぱいの、島の前の海面一面に
目を凝らしてみると、ほんとに居るのかと思う程の彼らだが
リズムを切って進んでいくのが見える
もし見えなければ
きっと、その日はちょっと、天気が悪かったに違いない
'78, 8/14


234.Ⅳ「海峡と島とみなと」
変わらない海峡に
時代ごと、時間ごとの船が進んでいく
ある日、ある時、船に乗って通り抜ける
向こうに取り立てて目新しいものはないが
通り抜けたことは一つの儀式だった
一つの船を選んでやってきたこと
凪いでいれば、霞んでいれば、風が少しあれば
それぞれの第一印象があり
正面の島は良くも悪くも逃げていったところ
三千年の樹齢だいう大きな楠木が
新しい逃亡者を迎える
島の住人達が迎えに来る
けれど、人に会うためにやってきたのではなかった
昔から、ここにやってきた人々には
逃げた結果が、ここに来たというだけのことなのに
またこの社会に馴染まなければならなくなる
昔から、さして変わっていないだろうこの海峡を
それぞれの時代の想い巡らせで、やってきて
興奮し、あるいは無感動にやり過ごし
ひらける新しい海は、やはり潮の味がし
みなとではきのうも嗅いだ、誰かのふかしているタバコの匂いがする
'78, 8/17


235.Ⅴ「見えたもの見えなかったもの」

帰ってくると
誰でも手にすることの出来るみやげと
置き忘れてきたものとで
天秤は微妙にゆれる
ここにさえある情景のエッセンスを
敢えて求めて出かけた
やむにやまれぬ訳と結果を
いま、ポケットから探す

何もないという事は決してなかった筈
絶対にあるのだから気付かれぬように自分の匂いを消し
見えるもの全てを賞でることの出来るように と
確か、そのような覚え書きを入れていたように思うが
ポケットはなぜか軽く
帰ってきて日がたつにつれて、形のはっきりしてくる旅の印象のために
うっかり洗濯してしまった紙切れみたいに
ぼろぼろになって出てきて、もう読めない

きっと見ることも出来たろうに
まだ目が見えないのか
よく馴染んでいないのか
気配があってすら、避けていたような気がする。
もう少しの間、目をしばたたかせて
ぱっちりした目で新しい一歩で
新しい形の自分と見えなかったものを、見つける
'78, 8/22


一つの旅行によって書かれた、それぞれ独立した詩五編を一つにまとめ、大バッハのひそみに倣ってカプリチョと名付けてみた。作詩の際のイメージは、VivaldiのstringsConcertoRV141etc.(イムジチ)から 。場所は愛媛大三島。
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