おそらく誰もやってこない、隠れブログ。その昔書き散らしたものを、さりげなく・・
Posted by proteus - 2007.08.11,Sat
231.Ⅰ「出発の前の晩のさまざまなおもい」
そこにうずくまるべき場所があり
何千年もの長い間、私の殻は居続けることが出来ると信じる
しばらくの間、私は自分の殻を眺め
声には出さぬけれど、雄叫びをあげる気持ちで
ついさっきまで、どうしても出来なかった事柄を、
全部してくるために出かけることにする
ひとつのことをするたびに
肉付けされて大きくなり
持ちきれるいっぱいの能力はやがて飽和する
そこにうずくまるべき場所があり
昔、地上を歩き回っていた私がある
愛すべきあいつに
この力こぶを与えてやりたいと
ゆびさし、みつめる
棺に入ってから物語が始まっては何にもならないから
そこからゆびさして、更に力を送ってみる
'78, 8/ 7
232.Ⅱ「道すがらおもうこと」
私の住む町と変わりのない雲が浮かび
同じ暑さの空気があり、ざわめきがある
腕を抉って、死ぬまで消えない程の傷を
体当たりしてでも、そこで得ようと決心するが
傷つくすれすれで止めてしまう
言い訳は”ちょっと一服”だけど
あとは必ず気が変わって逃げることになっている
よく似た景色の、微妙に違うところへ切り込んでいけば
必ず自分を含めた絵になって、いつまでも残り、それが目的になるが
素通りには何もぶちあたるものはなく
入っていく空隙なんてものも見えないので
疲れた顔して次のページに入って行くばかり
そこにまだ私は登場しない。端役にさえまだなっていない
途中下車してみようか。乗り換えてみようか
鼻をひくひくさせて匂いを追ってみるが、今は鼻がちょっと利かないので一服
'78, 8/13
233.Ⅲ「海を渡っていくものら」
凪いでいる海がある
小さなスクリュー音と
耳をこする風の音がある
思い立って渡ろうとする、遙か大昔から
目には見えない程の小さなものらが、その海を渡っている
快いリズムを口ずさみながら
まさしく大行進である。
快速艇が波を蹴立てて去っても
動ずることもなく波に乗りながら、黙々と進み
岸に着くとそのままどこかへ消える
だから島は彼らの体でふくらんでいて、海の色とよく似ることがある。
彼らは、海が日を照り返す時
その加減で一瞬見えることがあり
私達の住んでいる都会の中や、平野の中では気がつく機会さえないが
見えたからと言って、何があると言うこともなく
彼らが海を渡っていく後ろ姿を見る時
彼らこそ生き物が住むところ、全部を覆っている香りであることが信じられる
吸い込むとそれぞれの場で最もしっくりしている
見ろ。彼らのリズムが聞こえる
勇壮で、少し悲しそうで、ほんの少し愛嬌のある
見上げても、見上げきれない空のその下
視野いっぱいの、島の前の海面一面に
目を凝らしてみると、ほんとに居るのかと思う程の彼らだが
リズムを切って進んでいくのが見える
もし見えなければ
きっと、その日はちょっと、天気が悪かったに違いない
'78, 8/14
234.Ⅳ「海峡と島とみなと」
変わらない海峡に
時代ごと、時間ごとの船が進んでいく
ある日、ある時、船に乗って通り抜ける
向こうに取り立てて目新しいものはないが
通り抜けたことは一つの儀式だった
一つの船を選んでやってきたこと
凪いでいれば、霞んでいれば、風が少しあれば
それぞれの第一印象があり
正面の島は良くも悪くも逃げていったところ
三千年の樹齢だいう大きな楠木が
新しい逃亡者を迎える
島の住人達が迎えに来る
けれど、人に会うためにやってきたのではなかった
昔から、ここにやってきた人々には
逃げた結果が、ここに来たというだけのことなのに
またこの社会に馴染まなければならなくなる
昔から、さして変わっていないだろうこの海峡を
それぞれの時代の想い巡らせで、やってきて
興奮し、あるいは無感動にやり過ごし
ひらける新しい海は、やはり潮の味がし
みなとではきのうも嗅いだ、誰かのふかしているタバコの匂いがする
'78, 8/17
235.Ⅴ「見えたもの見えなかったもの」
帰ってくると
誰でも手にすることの出来るみやげと
置き忘れてきたものとで
天秤は微妙にゆれる
ここにさえある情景のエッセンスを
敢えて求めて出かけた
やむにやまれぬ訳と結果を
いま、ポケットから探す
何もないという事は決してなかった筈
絶対にあるのだから気付かれぬように自分の匂いを消し
見えるもの全てを賞でることの出来るように と
確か、そのような覚え書きを入れていたように思うが
ポケットはなぜか軽く
帰ってきて日がたつにつれて、形のはっきりしてくる旅の印象のために
うっかり洗濯してしまった紙切れみたいに
ぼろぼろになって出てきて、もう読めない
きっと見ることも出来たろうに
まだ目が見えないのか
よく馴染んでいないのか
気配があってすら、避けていたような気がする。
もう少しの間、目をしばたたかせて
ぱっちりした目で新しい一歩で
新しい形の自分と見えなかったものを、見つける
'78, 8/22
一つの旅行によって書かれた、それぞれ独立した詩五編を一つにまとめ、大バッハのひそみに倣ってカプリチョと名付けてみた。作詩の際のイメージは、VivaldiのstringsConcertoRV141etc.(イムジチ)から 。場所は愛媛大三島。
そこにうずくまるべき場所があり
何千年もの長い間、私の殻は居続けることが出来ると信じる
しばらくの間、私は自分の殻を眺め
声には出さぬけれど、雄叫びをあげる気持ちで
ついさっきまで、どうしても出来なかった事柄を、
全部してくるために出かけることにする
ひとつのことをするたびに
肉付けされて大きくなり
持ちきれるいっぱいの能力はやがて飽和する
そこにうずくまるべき場所があり
昔、地上を歩き回っていた私がある
愛すべきあいつに
この力こぶを与えてやりたいと
ゆびさし、みつめる
棺に入ってから物語が始まっては何にもならないから
そこからゆびさして、更に力を送ってみる
'78, 8/ 7
232.Ⅱ「道すがらおもうこと」
私の住む町と変わりのない雲が浮かび
同じ暑さの空気があり、ざわめきがある
腕を抉って、死ぬまで消えない程の傷を
体当たりしてでも、そこで得ようと決心するが
傷つくすれすれで止めてしまう
言い訳は”ちょっと一服”だけど
あとは必ず気が変わって逃げることになっている
よく似た景色の、微妙に違うところへ切り込んでいけば
必ず自分を含めた絵になって、いつまでも残り、それが目的になるが
素通りには何もぶちあたるものはなく
入っていく空隙なんてものも見えないので
疲れた顔して次のページに入って行くばかり
そこにまだ私は登場しない。端役にさえまだなっていない
途中下車してみようか。乗り換えてみようか
鼻をひくひくさせて匂いを追ってみるが、今は鼻がちょっと利かないので一服
'78, 8/13
233.Ⅲ「海を渡っていくものら」
凪いでいる海がある
小さなスクリュー音と
耳をこする風の音がある
思い立って渡ろうとする、遙か大昔から
目には見えない程の小さなものらが、その海を渡っている
快いリズムを口ずさみながら
まさしく大行進である。
快速艇が波を蹴立てて去っても
動ずることもなく波に乗りながら、黙々と進み
岸に着くとそのままどこかへ消える
だから島は彼らの体でふくらんでいて、海の色とよく似ることがある。
彼らは、海が日を照り返す時
その加減で一瞬見えることがあり
私達の住んでいる都会の中や、平野の中では気がつく機会さえないが
見えたからと言って、何があると言うこともなく
彼らが海を渡っていく後ろ姿を見る時
彼らこそ生き物が住むところ、全部を覆っている香りであることが信じられる
吸い込むとそれぞれの場で最もしっくりしている
見ろ。彼らのリズムが聞こえる
勇壮で、少し悲しそうで、ほんの少し愛嬌のある
見上げても、見上げきれない空のその下
視野いっぱいの、島の前の海面一面に
目を凝らしてみると、ほんとに居るのかと思う程の彼らだが
リズムを切って進んでいくのが見える
もし見えなければ
きっと、その日はちょっと、天気が悪かったに違いない
'78, 8/14
234.Ⅳ「海峡と島とみなと」
変わらない海峡に
時代ごと、時間ごとの船が進んでいく
ある日、ある時、船に乗って通り抜ける
向こうに取り立てて目新しいものはないが
通り抜けたことは一つの儀式だった
一つの船を選んでやってきたこと
凪いでいれば、霞んでいれば、風が少しあれば
それぞれの第一印象があり
正面の島は良くも悪くも逃げていったところ
三千年の樹齢だいう大きな楠木が
新しい逃亡者を迎える
島の住人達が迎えに来る
けれど、人に会うためにやってきたのではなかった
昔から、ここにやってきた人々には
逃げた結果が、ここに来たというだけのことなのに
またこの社会に馴染まなければならなくなる
昔から、さして変わっていないだろうこの海峡を
それぞれの時代の想い巡らせで、やってきて
興奮し、あるいは無感動にやり過ごし
ひらける新しい海は、やはり潮の味がし
みなとではきのうも嗅いだ、誰かのふかしているタバコの匂いがする
'78, 8/17
235.Ⅴ「見えたもの見えなかったもの」
帰ってくると
誰でも手にすることの出来るみやげと
置き忘れてきたものとで
天秤は微妙にゆれる
ここにさえある情景のエッセンスを
敢えて求めて出かけた
やむにやまれぬ訳と結果を
いま、ポケットから探す
何もないという事は決してなかった筈
絶対にあるのだから気付かれぬように自分の匂いを消し
見えるもの全てを賞でることの出来るように と
確か、そのような覚え書きを入れていたように思うが
ポケットはなぜか軽く
帰ってきて日がたつにつれて、形のはっきりしてくる旅の印象のために
うっかり洗濯してしまった紙切れみたいに
ぼろぼろになって出てきて、もう読めない
きっと見ることも出来たろうに
まだ目が見えないのか
よく馴染んでいないのか
気配があってすら、避けていたような気がする。
もう少しの間、目をしばたたかせて
ぱっちりした目で新しい一歩で
新しい形の自分と見えなかったものを、見つける
'78, 8/22
一つの旅行によって書かれた、それぞれ独立した詩五編を一つにまとめ、大バッハのひそみに倣ってカプリチョと名付けてみた。作詩の際のイメージは、VivaldiのstringsConcertoRV141etc.(イムジチ)から 。場所は愛媛大三島。
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